薬物療法 第1回(インスリンってなんだろう)
- こんにちは、東名厚木病院薬剤科スタッフです。
- 今回から糖尿病薬のあんな事こんな事を数回に分けてお話ししていきたいと思います。
- さて糖尿病の薬物療法と聞いて皆様はどのようなイメージをお持ちでしょうか。
- インスリン治療という言葉をお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
- 第1回目はインスリンについてお話ししたいと思います。
インスリンってなに?
インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンです。すい臓で作られています。インスリンの分泌がなくなる1型糖尿病の患者さんには、必ず治療にインスリン注射が用いられます。2型糖尿病患者さんでも、食生活の生活の乱れなどにより高血糖が持続すると、すい臓が疲れてしまいインスリンの分泌が低下することがあります。その際は外からインスリンを補うインスリン治療が必要になります。
インスリンの働きとは
●:ブドウ糖
インスリンは上記の様にして体内の血糖値をコントロールしています。
- ただ糖尿病の方では次のようなことが起きます。
- ① インスリンが分泌されても、ブドウ糖が肝臓や筋肉へ取り込まれにくくなる。
- ② インスリンの分泌量が低下する。
- 糖尿病の場合
インスリンの分泌パターン
インスリン注射による治療は、基礎・追加分泌のどちらが足りないかによって、作用時間の異なるインスリン注射製剤を組み合わせて使用します。
追加分泌が足りない…超速効型、速効型インスリン
ノボラピッド注フレックスタッチ アピドラ注ソロスター
基礎分泌が足りない…持効溶解型インスリン
インスリングラルギン注BSミリオペン トレシーバ注フレックスタッチ
インスリン治療は、本来体から出ているインスリンを外から補う治療のため、生理的に自然な治療法です。インスリンは毎日自分(またはご家族)で注射を行わなくてはならないので初めに勧められたときは抵抗を感じると思います。また、患者さんから「インスリンを打つようになったら終わりだ」といった悲観的な言葉が聞かれることがあります。しかし、食事・運動・内服薬でコントロールが困難な場合には早期にインスリンを用いて血糖コントロールを行った方が、合併症を起こさず死亡リスクを減らすことが分かっています。合併症を起こしてから後悔しないためにも主治医や療養指導スタッフと相談してよりよい選択をしていただきたいと思います。
- インスリン小話
- 1921年夏、トロント大学(カナダ)にて若い外科医フレデリック・バンティング、学生チャールズ・ベストにより抽出され、糖尿病のビーグル犬マージョリーに使用しました。
- 一般的な糖尿病のビーグル犬は1,2週間で死んでしまうのにマージョリーは70日間生き続けることができました。
- 1922年冬、トロント総合病院にて少年レナード・トンプソンがインスリン治療を受けた最初の患者となり、彼の生命は奇跡的に助かりました。
- 現在、インスリンは品質が高く、安全で使いやすい製品がたくさん発売されており、多くの糖尿病患者さんの生命を救っています。
- インスリンを発見したフレデリック・バンティング博士の誕生日である11月17日は世界糖尿病デーとなっています。
- 参考書籍
- 1)マイケル・ブリス(堀田饒訳): インスリンの発見. 朝日新聞社, 1993.
東名厚木病院 薬剤科 清野 晃弘