Ⅰ. 当院の臨床倫理指針
当院は、地域医療支援病院として地域住民の声に傾聴しながら、患者さんの尊厳と基本的人権を尊重して診療を行っていきます。
- 患者さんの基本的人権の尊重
患者さんの社会的背景や個別的で多様な価値観にも配慮し、基本的人権を守りながら診療を行っていきます。
- 診療過程における倫理的課題への留意
患者さんの診療を行っていく過程で、倫理的課題の有無に十分配慮しながら診察を行っていきます。
- 法令と院内規定の遵守と関係規範、指針の尊重
診療や倫理的課題の検討に際しては、関連法規や院内規定を遵守し、関係する種々の規範を尊重し、関連指針を参照しながら進めていきます。私たちは終末期医療、輸血拒否、脳死判定、臓器移植などに関しては、それぞれ関係法規・ガイドラインに準拠して診療にあたります。
- 医療倫理4原則の尊重
当院では、医療における倫理的指針として以下に示す4つの原則に従って、様々な倫理的課題の検討を行っていきます。
1) 患者さんの自律性尊重(患者の自己決定権の尊重)の原則
患者さんが自己の治療方針を決定していく際に、自由な意思に基づいた自律的判断ができるように十分な説明を行ったうえで、患者さんの同意を確認しながら診療を行っていきます。その際、個人情報保護に十分留意いたします。2) 患者さんに最大限に利益をもたらす原則
患者さんの利益に資するように行動していきます。3) 患者さんに危害を加えないように行動する原則
患者さんに対して肉体的、精神的危害を加えることのないように十分留意しながら安全な医療を目指していきます。4) 患者さんに医療を公平、平等に提供する原則
すべての患者さんを差別することなく、公平、平等に医療を提供します。 - 多職種による倫理的課題の民主的、集団的検討
診療過程の中で倫理的課題を検討していく際には、一人の職員の判断に依拠することなく、当該課題に関与する多職種かつ複数の職員による対等な関係のもとで、適宜院内臨床倫理委員会の助言や支援を受けながら、主体的、客観的に検討していきます。
- 臨床研究の施行時における適正な倫理的審査
医学の発展に寄与すべく臨床研究を行っていく際に、患者さんに不利益が被ることのないように、外部委員が参加した臨床研究倫理委員会において倫理的な観点を中心に厳正な審査を行っていきます。
Ⅱ. 具体的な倫理的課題への対応方針
- 意識不明・自己判断不能の患者のための意思決定について
- 家族など適切な代理人がいる場合は、その代理人の推定意思を尊重し、患者にとっての最善の方針をとることを基本として合意を得るように努めます。
- 適切な代理人がいない場合は、主治医・担当医が患者にとっての最善の方針をとることを基本として、臨床倫理の原則に則り判断します。
- 心肺蘇生法をしないこと(DNAR)について
心肺蘇生の有効性と予想される結果について患者や家族に十分に説明し、理解と合意を得ることを前提とします。そのうえで、以下の原則に則り判断するとともに指示します。
- 患者が意思表示できる間に、蘇生に対する希望を確認し、それを尊重します。
- 患者の意思を確認できない場合で、家族が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。
- 家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。
- 家族がいない場合及び家族が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とします。
- 輸血拒否について
宗教上の理由の理由などにより輸血を拒否される患者には、「宗教的輸血拒否に関するガイドライン(2008年:宗教的輸血拒否に関する合同委員会)に従い、適切に対応します。
- 検査・治療・入退院の拒否、指示不履行について
医療行為によって生ずる負担と利益の説明に努め、その上で、望まない医療行為を患者が拒否できる権利を認めます。ただし、感染症法などに基づき、医療行為の拒否が制限される場合があります。
- 身体的拘束について
身体的拘束は、患者の生活の自由を制限することであり、患者の尊厳ある生活を阻むものです。当院では、患者の尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが身体的・社会的・精神的弊害を理解し、緊急やむを得ない場合を除き、原則として身体的拘束を実施しません。