がん治療とは
がん治療と近年の傾向についてご紹介します。
1. がんは身近で長く付き合う病気
日本では現在、一生のうち2人に1人ががんになるといわれています。以前は、がんというと「不治の病」というイメージでしたが、近年では医療の進歩により生存率は向上しています。そのため、仕事や家事など普段通りの生活をしながら治療を続けている人も増えており、がんは「長く付き合う病」へと変化しています。
2. がん治療は4つの治療法の組み合わせ(集学的治療)
がんの治療方法には、基本的に手術療法、化学(薬物)療法、放射線療法、緩和ケアの4種類があります。この4つの中から最適なものを選択し、組み合わせることで、高い治療効果につながります。日本のがん治療は、これまで手術療法が中心でしたが、近年は化学療法や放射線治療が進歩し、がんの種類やステージ(病期)によっては手術と変わらない効果が認められています(放射線治療センター)。また、退院後も定期的な通院が必要な場合が多く、治療期間は長期になる傾向があります。
主な対象疾患
3. がん患者さんの暮らしをサポート
治療の長期化により近年では、がんを治すのと同じくらい療養生活の質も大事とされています。そのため、仕事との両立や治療費に関するサポートや、治療によって髪の毛が抜けたり爪が変色する見た目の変化に対してもサポートをしています。これは、アピアランスケアと呼ばれ、医療用ウィッグをはじめ、マニキュアやメイクなどおしゃれを楽しむためのサポートとなっています。それは女性だけでなく、男性のためのケアもあります。
4. 痛みやつらさは、がまんしない
緩和ケアは、「がんの末期に受けるもの」というイメージが強いかもしれませんが、がんに伴う痛みやつらさは「がんと言われた時から」はじまるといわれています。それらを和らげるのが緩和ケアです。当院では、緩和ケアチームが患者さんやご家族を支えていきますので、決してがまんはせずに、まずはご相談ください。
がんの治療法
4つのがんの治療についてご紹介します。
1. 手術療法
手術では、がんやがんの周辺の臓器を切り取ります。がん細胞は周囲の組織に広がったり(浸潤)、リンパ管や細かい血管に入ってリンパ節や他の臓器に広がったり(転移)することがあります。
そのため、がんを切除し、その臓器の周辺組織やリンパ節に転移があれば、一緒に切り取ります。早期のがんや、ある程度進行しているがんでも、切除可能な状態であれば、手術療法が積極的に行われます。
当院では、2024年4月よりロボット支援手術を開始いたします。
当院で手術を行っている主ながん疾患
- 食道がん、胃がん、直腸・結腸がん、肝がん、胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がん、膵がん、甲状腺がん(消化器外科)
- 乳がん(乳腺外科)
- 肺がん、胸腺がんなど(呼吸器科)
- 膀胱がん、前立腺がんなど(泌尿器科)
*詳細は各診療科をご参照ください。
2. 化学療法
主に、抗がん剤によってがん細胞を死滅させたり、増殖を抑えたりする治療方法です。
点滴や注射、内服で投与される抗がん剤は、血液を通して全身をめぐるため、ごく小さな転移にも効果があります。化学療法は単独で行われることはもちろん、手術や放射線治療と組み合わせて行われることも多くあります。
病気や病状によって「ホルモン治療薬」「細胞障害性抗がん薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」などを組み合わせて治療を行います。
通院での治療が一般的ですが、当院では患者さんの状態により、入院での化学療法も行っています。
副作用について
化学療法は、脱毛、吐き気、倦怠感、しびれ感などの副作用や、がん以外の肝臓や腎臓、造血器官などへの障害が避けられず、患者さんにとってつらい治療になりがちなのが難点です。
しかし、副作用を和らげる薬やケアによって、日常生活に支障がない程度に症状を軽くできるようになってきており、多くの治療は外来通院で行うことが可能です。
ホルモン療法
乳がんや子宮がん、前立腺がん、甲状腺がんなど、ホルモンが密接に関わっているがんに対しては、「ホルモン療法(内分泌療法)」がよく行なわれます。特定のホルモンの分泌や作用を抑制することで、がん細胞の活動を抑えて腫瘍を小さくしたり、転移や再発を抑えたりします。副作用は比較的少なめですが、長期間治療を続ける必要があります。
主な対象疾患
3. 放射線治療
手術のように臓器を取り除いたりすることなく、がんの部分に放射線をあてて治療します。胸部X線撮影と同様に、放射線があたっても痛みや熱を感じることはありません。
治療前の検査技術や照射方法の進歩により正常な細胞には放射線をあてずに、がんの部分だけに集中的に照射することが可能となり、効果は格段に向上しています。
治療の目的は、完治を目指す場合と苦痛を緩和する場合の2つに分かれます。単独で行われることもありますが、手術や薬物療法と併用されることもあります。
厚木にいながら大学病院と同じ治療環境を整備
当院では2017年6月より最新型の高精度放射線治療装置「エレクタシナジー」を導入いたしました。これによりIMRT(強度変調放射線治療)をはじめとした理想的な放射線治療が可能となっています。さらに、東京大学医学部附属病院放射線治療部門と専用のネットワーク回線を結び、放射線治療計画装置、治療情報、検証情報などを共有し、厚木市にいながら大学病院と同じ治療環境を整えています。
放射線治療の実際
治療部位を決め、マーキング(皮膚に印をします)したところを、1回から数回照射していきます。照射回数や時間は、病状や疾患により異なりますが、1回の治療時間は10分程度で一定期間の継続した治療が必要になります。
4. 緩和ケア
「緩和ケア」は、がんと診断されたときから行う、身体的・精神的な苦痛をやわらげるためのケアです。がんになると、痛みや倦怠感などのさまざまな身体的な症状や、落ち込み、悲しみなどの精神的な苦痛を経験します。当院では、“患者さんやご家族の生活を支える”をスローガンに、がんから生じる様々な苦痛を、専門チームが連携しながらケアを行っております。
緩和ケアチームが患者さんをサポート
当院では、患者さん自身が「どのように過ごしていきたいのか」を丁寧にお聞きし、チームで連携してサポートしていきます。
がん治療の期間は肉体的な負担を和らげるだけでなく、安心して快適に治療に専念できる環境づくりや心理的なサポート、さらには治療後の生活までを見据えた社会的サポートも必要になってきます。このため、医師・看護師をはじめ、薬剤師や医療福祉相談員など様々な職種で連携し、患者さんの心配や不安をトータルに取り除くサポートが重要になってきます。これが、広い意味での緩和ケアと考えます。
緩和ケアについては、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重点的に取り組むべき課題として位置付けられています。がん患者さんとその家族が、可能な限り質の高い治療・療養生活を送れるように、身体的症状の緩和や精神心理的な問題などへの援助が、終末期だけでなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われることが求められており、当院はがん治療の総合病院として万全のサポート体制を整えております。