透析治療とライフスタイルについて
どうして透析が必要なのですか?
腎臓は、人が生きていくために必要な働きをたくさんしています。この腎臓の働きが様々な原因で徐々に低下する病気が慢性腎臓病(CKD)です。当院では、一般外来のとうめい厚木クリニックにて、透析導入前から腎臓の状態を把握し、治療を行っています。しかし、慢性腎臓病が進行すると、失った腎臓の機能を元に戻すことは残念ながらできません。食事療法や薬物療法で腎臓の働きを守っていても、徐々にその働きが低下することがあります。残っている腎臓の機能だけで体のバランスを保つことができなくなった状態を腎不全といい、透析治療が必要となります。
腎臓のはたらき
血液をろ過して尿をつくる |
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体に溜まる余分な水分や老廃物を排泄 必要なものを再吸収する |
ホルモンをつくる |
血圧を維持するホルモン(レニン) 血液を創るホルモン(エリスロポエチン) |
腎機能と腎不全のときに起こる異常の例
腎臓の機能 | 腎不全のときに起こる異常の例 |
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水の排泄 | 浮腫(むくみ)、高血圧、肺水腫(胸に水が溜まる) |
酸・電解質の排泄 | アシドーシス(体に酸が溜まる)、高カリウム血症、高リン血症 |
老廃物の排泄 | 尿毒症(気分不快・食欲低下・嘔吐・意識障害) |
造血ホルモン産生 | 貧血 |
ビタミンD活性化 | 低カルシウム血症、骨の量・質の低下 |
腎不全の治療法
治療方法 | 具体例 |
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原疾患の治療 | 糖尿病のコントロール・腎炎の治療 など |
生活指導 | 適切な運動・禁煙 鎮痛剤・造影剤など腎毒性物質の制限・禁止 定期的な外来受診・服薬 |
食事療法 | 低塩分食・低たんぱく食 |
薬物療法 | 高血圧の治療 タンパク尿を減らす治療 (ACE阻害薬・アンギオテンシン受容体拮抗薬) 尿素窒素を除去する療法(活性炭など) |
腎不全による症状に 対する治療 |
貧血の治療(エリスロポエチン投与) 骨病変の治療(ビタミンD投与など) 高カリウム血症の治療(陽イオン交換樹脂) 酸血症(アシドーシス)の治療(重曹など) |
透析治療を開始するまで
専門医の外来にて、食事療法や薬物療法といった保存的な治療で改善が難しくなると、慢性腎臓機能障害(腎臓の働きが10%以下)となります。これが治療開始の目安です。専門医が総合的に判断して、透析治療開始の時期を決めます。治療が必要になった場合、シャントといって動脈と静脈の血管をつなぎ合わせる手術を行い、治療開始に必要な準備を行います。透析治療は、このシャントを使って行います。また、この時期から透析看護師やソーシャルワーカーが介入し、患者さまのライフスタイルにあった透析が行えるように、説明を行っていきます。
検査所見と必要な処置
腎機能 (目安) |
症状 | 検査所見 | 必要な処置 |
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90%以上 60~90% |
ほとんどなし | 蛋白尿・血尿・高血圧 | 定期的検査 一度は腎臓専門医受診 |
30~60% | むくみ | 上記+クレアチニン上昇 | 腎専門医によるフォロー 腎不全進行抑制の治療 |
15~30% | 上記+易疲労感 | 上記+貧血・カルシウム低下 | 透析・移植の知識取得 腎不全合併の治療 |
15%未満 (末期腎不全) |
上記+吐気 食欲低下・息切れ |
上記+カリウム/リン上昇 アシドーシス・心不全 |
透析・移植の準備 10%以下の腎機能では透析開始・移植施行 |
仕事と生活
透析治療を行うまでの期間が長ければ長いほど、準備を十分に行ってから治療を開始することができます。仕事をされている方でも、治療が生活の一部となるように調整をしたり、自分に合った治療(治療クールや時間帯)や施設を選択できます。この調整の相談にもソーシャルワーカーが対応いたします。
透析治療は、週3回・4〜5時間の治療になるため、通うのに自宅から近い施設での治療をおすすめします。
透析中の過ごし方
治療中は、シャントのある腕は機械とつながっているため、必要時以外はベッドから離れることができませんが、ベッド上での制限は特にありません。透析中の患者さまは、備え付けのテレビを見て過ごしたり、本を読むなど様々です。当院では治療の観点から、患者さまが使用するベッドの配置は、スタッフが調整し指定するようになっています。
透析治療に関して詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
日本腎臓学会ホームページ 小冊子「腎不全 治療選択とその実際」
透析治療と管理サポート
透析治療中は、担当看護師と臨床工学技士が定期的な血圧測定や体調管理を行います。また、胸のレントゲン撮影(2ヶ月1回)、血液検査(月1回)、心電図・腹部超音波・心臓超音波・脈波検査(年1回)を行い、体の状態を把握し、必要であれば専門医による診察・治療を受けていただくこともできます。
災害時のサポート
当センターでは、災害時に透析治療が必要な非常用電源と市水・井水の設備を整えています。また、患者さまへの連絡は、You O.K(ネットワーク通信)を利用して、お知らせなどメール配信をおこなっています。患者さまが自宅から当センターの状況を確認する際は、伝言ダイヤルを利用して当センターの状況を把握することができます。